企業がフリーランスと取引をする場合、フリーランスに「注文書」や「発注書」を発行するケースは多くあります。また、フリーランスから「注文請書」を発行してもらっている企業も多いでしょう。このように、ビジネスの現場では頻繁にやり取りされる注文書・注文請書ですが、それぞれの法的効力を正しく理解している担当者様は少ないかもしれません。今回は、注文書・発注書・注文請書の役割や法的効力、契約書との違いなどについて解説していきます。
継続的売買契約の基本契約書について
次に、個別契約の成立時期、成立条件について明確になっているか、確認します。
民法改正後の原則として、承諾が相手に到達した時に契約成立(97Ⅰ)とされ、対話者間の契約については承諾期間の定めのない申し込みは対話が継続している間いつでも撤回できること(525Ⅱ、Ⅲ)が定められました。
商法509条1項においては、商人たる会社は平常取引をする者から営業の部類に属する契約の申し込みを受けた時は遅滞なく契約の申込みに対する許否の通知を発しなければならないとされています。
以上の法律の規定を念頭に、取引の実態に合わせて明確に契約書にしておくことが必要になります。
3.相殺予約についての定めがあるかを確認する
相殺予約についての定めがあるかも確認していきます。期限の利益喪失約款により弁済期を到来させる、又は弁済期にあるか否かを問わずに相殺することができるとして相殺を当事者が了解した形とする方法もありますので実態にあわせて検討します。
4.危険負担の規定も改正民法を踏まえて検討する
危険負担の規定も改正民法を踏まえて検討する必要があります。
改正後民法では危険負担の性質が変化しています。従前は双方契約から生じる債務の一方が債務者の責めに帰することができない事由により履行不能になった場合には反対給付義務消滅するとされていました。しかし、改正法では債権者に履行拒絶を認める制度へと変更(536Ⅰ)になっています。
また、債権者が債務者の履行不能を理由として反対債務を消滅させるためには解除の意思表示をする必要あります(541以下)。
特定物の売買の危険の移転時期に関して、目的物の引き渡しがあった時点以後に目的物が滅失損傷した場合債権者(買主)が危険負担をする規定が新設されました(民567Ⅰ)。
5.所有権の移転時期について明確にする
所有権の移転時期についても明確にしておきます。
所有権の移転の時期は検品時、検収時、代金完済時とすることが考えられます。前2者が多いですが、買主に信用不安がある場合には代金完済まで所有権を留保することが考えられます。
6.納品・検査・受領について確認する
納品・検査・受領について、実務上はこれらの条項が非常に重要になります。
納品について
納品については、納品の時期、場所、履行に関する費用についての定めがあるかどうか、これを確認しましょう。
買主に受領拒絶があった場合の定めはあるかどうか(買主側の事情による納品拒絶の場合、当事者がどのような責任を負うのか)もあわせて確認します。なお、保存義務、履行の費用の増加は債権者負担(改正民法413Ⅰ・Ⅱ)となります。
検査・検収について
検査・検収についても重要な規定です。
検査の時期、検査方法、検査基準が明確になっているか?確認しましょう。
そして不合格品の取り扱い(完全履行請求に加え、損害賠償請求、解除、履行の際の費用負担の定め)についても以下に述べる民法改正や商法の条文を踏まえて反映しているか、確認が必要です。
商法526条では、商人間の売買では納品を受けた後遅滞なくその目的物を検査し、瑕疵や数量不足を発見した場合には直ちに通知する義務が課され、怠ると救済の権利を失うとされています。
これに関連して、瑕疵担保責任についての規定が特に実務上は重要です。改正民法では、契約不適合を理由とする債務不履行責任へ統合されました。 取引基本契約書とは
すなわち、従前、特定物売買は引き渡しにより売主の義務果たされ、瑕疵担保責任のみが問題となっていたものが、改正民法では債務不履行責任として統合されています。
買主側の救済手段としては特定物・不特定物を問わず、物の種類・品質または数量に関して契約不適合があった場合には買主の救済手段として代金減額請求(563)、履行追完請求権(562)が認められることになりました。
期間制限として、契約不適合を知ってから1年以内に不適合の事実を売主に対して通知する義務が明記され、これを怠った場合には契約不適合を理由とする権利を失うという効果(566)が定められました。ただし商人間の売買については検査においてただちに発見できない瑕疵については引き渡しから6か月以内に責任追及可能(商法526Ⅱ)とされます。この場合、買主がこの期間内に瑕疵を発見できなければ過失の有無を問わず買主は売主に対して権利を行使できなくなると解されています。
権利行使により保存された債権は消滅時効の一般原則により引き渡しから10年または契約不適合を知ってから5年(166Ⅰ)で消滅します。
なお、数量または権利にかかる契約不適合には期間制限の適用はありません(種類または品質に関する契約不適合のみ上記取り扱いになるということになります)。
QAで学ぶ契約書作成・審査の基礎 18回 取引基本契約(契約名~適用範囲)
2022/02/15 契約法務
いずれも「. 契約」でも「. 契約書」でもどちらでも構いません。③はその製品の供給者側(取引基本契約書とは 以下「売主」という)の, ④と⑤はその供給を受ける側(以下「買主」という)(特に大手企業が外部企業から製品, 部品等を調達するため)の契約のひな型に用いられることが多い名称です。取引内容として売買だけでなくソフトウェアのライセンス, (有償)サービスの提供等もある場合や中立的名称にしたい場合には, ①の「取引基本契約」のような名称がよいかもしれません。
Q2: 基本契約の前文は?
取引基本契約書
○○株式会社(以下「甲」という)および株式会社○○○○(以下「乙」という)取引基本契約書とは は, 乙の取扱う○○○○製品(以下「本製品」という)の取引に関する基本的条件に関し, 以下の通り契約(以下「本契約」という)を締結する。
【解 説】 取引基本契約書とは
【当事者の略称】 通常, 前文で各当事者の正式名称に続けその略称を記載します。その略称としては, 「甲」, 「乙」がどのような契約でも使えるので実務上最も多く使用されています。自社を「甲」とするのか, 相手方を「乙」とするのかについて決まりはありませんが, 自社が売主側で契約書のファーストドラフト(自社ひな型を含む)を提示する場合は相手方(顧客:買主)を立てて意識的に相手方を「甲」とすることがあります。
一方, 「売主」/「買主」のように, 各当事者の取引上の立場を示す略称を使うこともあります。
自社の標準契約書(ひな型)の場合, 「甲」/「乙」の代わりに, 自社について自社の略称(例:「日本ABC株式会社(以下「日本ABC」という)」)を使い, 相手方については, 例えば, 「お客様」/「買主」/「供給者」/「パートナー」などのような略称を用いることがあります。勿論, 相手方が決まっていれば, 相手方が自ら使っている略称を使用しても構いません。
【前文における取引目的物への言及】 前文では取引の目的物に関しても言及する場合が多いと言えます。その言及の方法としては, ①「乙[売主]の取扱う製品」, ②「甲が乙から購入する製品, 部品その他資材」, ③「乙の取扱う○○○○製品」, ④「第1条で定める製品」など様々なパターンがあります。
取引目的物に関し, ①, ②以上に限定する必要がなければ, ①, ②の記載の後に「(以下「本製品」という)」と続けて構いません。しかし, より具体的に特定・限定する必要がある場合は③のようにするか, それでもまだ正確には特定できない場合は④のように本文中で具体的に特定・定義する必要があります。
Q3: 契約の目的に関する規定は?
(例1)
第1条(目的)取引基本契約書とは 取引基本契約書とは
本契約に従い, 乙は, 本製品を甲に継続的に供給し, 甲はこれを継続的に購入するものとし, もって, 共同の利益の増進と円滑な取引の維持を図る。
(例2)
第1条(目的)
本契約に従い, 乙は, その製造する本製品を, 甲に対し, その再販売のために継続的かつ安定的に供給し, 甲はこれを購入する。
(例3)
第1条(目的)
契約の「目的」(というタイトル名の)条項に何を書くべきかは特に決まっているわけでも, それを必ず書かなけれならないというものでもありません(「目的」条項を置かず, いきなり, 適用範囲, 個別契約等を規定してもよい)。
上記(例1) のように下線部分(「もって, 」以下)のように精神的な文言を入れる例もあります。この文言(および「継続的に」の文言)は, それがあるからと言って, 例えば, 契約打切りに関する訴訟で裁判所が考慮して判断することはおそらくないでしょう。しかし, 訴訟が始まる前の場面では, 打ち切られる側(売主側または買主側)からこの文言を持ち出される可能性はあると思われ, 打ち切る側からすると少々やっかいな気がします。
上記(例2) の下線部については, 買主側の立場から, 売主に対し, 販売する製品は売主自らが製造したものであるべきこと, および, 買主はその製品を購入して再販売するのであるから継続的かつ安定的な供給がなされるべきことを確認させようとする意図があるように感じられます。
しかし, 売主側の立場からすると, このような文言を入れた場合, 製品の製造の第三者委託を制限され, また, 製品納入遅延・不履行により買主が再販売先への製品供給遅延・不履行に陥りそれにより買主が蒙った損害(再販売による逸失利益, 再販売先から請求された損害賠償等)が売主にとり予見可能な損害として賠償範囲に含まれてしまう可能性(民法416)もあるように思われ, 可能ならば削除した方がよいでしょう。
上記(例3) は, 上記のような文言は入れず, 単純に客観的に, 当事者間の取引条件を定めること自体を目的として規定し, 併せて, 第2項で「製品」の定義をしています。この例3の場合は, 前文の内容と重複しないよう, 前文の方は, 単に「○○株式会社(以下「甲」という)および株式会社○○○○(以下「乙」という)は, 以下の通り契約(以下「本契約」)を締結する。」で構いません。
Q4: 英文契約のように最初に定義条項は置かないのか?
A4:日本の契約書では, 伝統的に, その用語が最初に登場する都度「. (定義となる文言). (以下「○○」という). 」のようにして定義する場合の方が多いと言えます。しかし, 勿論独立した定義条項を置いても構いません(本稿末尾契約例第1条参照)。むしろ正確な定義が必要な用語が一定以上の数ある場合は独立した定義規定を置いた方がよいと言えます。
Q5: 取引基本契約書とは 契約の適用範囲に関する規定は?
(例1)
第2条(適用範囲)
本契約に定める条件は, 本契約の有効期間中に甲乙間で行われる本製品の個々の取引契約(以下「個別契約」という)の全てに共通して適用する。但し, 個別契約に本契約と異なる条件を定めた場合は, 当該個別契約の条件を優先して適用する。
(例2)
第2条(適用範囲)
本契約に定める条件は, 本契約の有効期間中に甲乙間で成立した本製品の個々の取引契約(以下「個別契約」という)の全てに共通して適用されるものとし, 両当事者が別途同一書面に署名(記名押印を含む)して合意しない限り, 追加の契約条件または本契約と牴触する契約条件は効力を有しないものとする。
(例3)
第2条(適用範囲)
1.本契約に定める条件は, 甲[買主]の〇〇工場資材部[または「○○事業本部購買部」など] が乙に対し行う注文に適用する。
【解 説】
基本契約の機能は, 当事者間で継続的かつ反復(繰り返し)して行われる取引(個別取引)に共通する基本的条件を定め, その基本的条件については個別取引ごとの契約交渉を省略し取引の効率化を図ることであり, 上記各例はそのことを明示しています。一方, 実際に取引される取引目的物, その価格, 納期等は, 個別取引ごとに合意される必要があり, その個別取引に係る契約(個別契約)と, 基本契約の優先関係が問題となります。
上記(例1) は, この点, 基本契約よりも個別契約を優先するものでこのような例が多いと言えます。しかし, 個別契約は, 通常, 現場(購買部門・営業部門)レベルの注文書・注文請書のやりとりで成立し, 可能性としては, 以下の①~③のようなこともあり得, そうだとすると, 法務部門が折角苦労して作成したまたは相手方と交渉の上合意した基本契約の条件がそのような個別契約の条件に優先されてしまうのは本当にいいのかという疑問があります。
①基本契約では製品の保証期間(不適合責任の期間)が受入検査合格時から1年間とされているのに, 買主の購買部門が注文書に「保証期間3年」と記載し, この注文書に対し売主の営業部門が異議なく注文請書を発行してしまった。
②買主が買主所定書式の注文書を発行しそこには「契約条件は裏面[または下記]条項による」とありその内容は基本契約とは全く異なる売主にとり不利なものだったが, この注文書に対し売主の営業部門が異議なく注文請書を発行してしまった。例えば, この注文書の条件には, 基本契約にある責任制限条項はなく, むしろ, 「乙[売主]は, 本契約に違反し甲[買主]に損害を生じさせた場合にはその全損害に対し責任を負うものとする。」との定めがあった。
上記(取引基本契約書とは 例2) は, この点に対し, 例1とは逆に, 基本契約を優先させることとしたものです。勿論, 取引目的物など元々個別取引ごとに定めると規定している事項以外の事項についても, 特定の場合には, 基本契約に定める条件が適合しない場合があり得ます。そこで, その場合には, 「両当事者が別途同一書面に署名(記名押印を含む)して合意しない限り, 追加の契約条件または本契約と牴触する契約条件は効力を有しない」とし, 買主・売主が一方的に発行する注文書・注文請書に記載された契約条件の適用を排除しつつ, 両当事者が別途同一書面に署名(記名押印を含む)して合意すればその合意された契約条件を優先適用することとしたものです(注文書等に電子的なものを含める場合には本稿末尾契約例第1条参照)。ちなみに, 英文契約の基本契約では筆者の知る限り基本契約を優先させるものの方が多いと言えます。
なお, 例1の「本契約の有効期間中に甲乙間で行われる本製品の個々の取引契約(以下「個別契約」という)の全てに共通して適用する」の内下線部分は, 例2では「甲乙間で成立した」としています。これは, 本契約の有効期間中に注文請書が買主に到達して個別契約が成立していれば, 本契約有効期間終了後も基本契約が適用されることを明確にしたものです。例1ではそういう意味になるのか明確でないように思われます。
上記(例3) は, 第1項で, 本契約の適用範囲を買主の注文書発行部門によって限定しています。大企業では, 工場または事業本部ごとに購買部門がありそれぞれ別々に納入業者と契約・発注していることがあります。このような場合, 買主側から契約前文を「○○株式会社(以下「甲」という)××工場資材部および株式会社○○○○(以下「乙」という)は, . 以下の通り契約. を締結する。」などとする契約ひな型を提示されることがあります。しかし, 契約の当事者となれるのはあくまでその会社(法人)であり資材部(取引基本契約書とは 購買部)のような部門は契約の当事者にはなれません。この点, そのままでも裁判所は契約の当事者をその会社と解釈し契約の有効性を否定することはおそらくないとは思いますが, やはりおかしいので, 相手方としては, 上記下線部分を「○○株式会社(以下「甲」という)」だけに修正した上上記(例3)第1項のように規定することを提案すべきでしょう。
取引基本契約書
法律相談をお受けしていると、継続的に製品や商品の取引があるにもかかわらず契約書が作成されておらず、担当者ご自身にも詳しい契約内容が分からないケースが散見されます。
今回は、継続的な取引(売買を念頭におきます。)において作成すべき取引基本契約書についてご説明したいと思います。 取引基本契約書とは
1 取引基本契約書とは
一言でいえば、個々の売買契約(以下「個別契約」といいます。)に共通するルールを定める契約書のことです。もちろん個別契約を行う度に売買契約書を作成しても構いませんが、反復継続して取引が行われる場合には煩瑣です。そこで、価格や数量のように個別取引毎に変わりうる要素以外の要素を予め書面化しておくものです。
2 一般的に記載される条項
取引基本契約書に盛り込まれることの多い条項は、次のようなものです。
① 基本契約と個別契約の適用関係
個別契約で特に定めない限りは、基本契約の条項が個別契約に適用されるというルールを定める条項です。
② 個別契約の成立時期
個別契約がいつ成立するのかという点に関する条項です。買主が売主に注文書を送付したことを受け、売主が買主に承諾書を送付し、承諾書が買主に届いた時点で個別契約成立とするなどの例があります。売主が承諾するか否かを明らかにしなかった場合に契約成立とするのか不成立とするのかについても定めておきましょう。
③ 納品手続、検査手続の内容
買主はどこに、どのような方法で納品しなければならないのか、納品を受けた買主はどのような検査をしなければならないのかという点についての条項です。意味が多義的にならないよう、できるだけ具体的に定める必要があります。
④ 所有権移転
売買契約では取引の対象物の所有権が売主から買主に移転しますが、所有権がいつ移転するのかという点についての条項です。代金の支払いがあった時とする例や、検査が完了した時とする例などがあります。当事者の過失によらず対象物が滅失してしまった場合の取扱いについても定めておきましょう。
⑤ 代金の支払い
いつの時点で締め切って、買主がいつ、どのような方法で代金の支払いをするのかという点に関する条項です。
⑥ 取引基本契約書とは 期限の利益喪失
例えば、どのような場合に買主が⑤で定めた支払期限以前に代金を支払わなければならなくなるのかという点に関する条項です。期限の利益喪失条項に関する詳しいご説明は、ライトハウスニュース第51号(2011年5月号)「期限の利益喪失条項」 * をご参照下さい。
⑥ 解約
継続的な取引は一定の期間取引が行われることを前提としますので、契約期間の途中で取引を終了させる必要が出てくるケースは当然考えられます。そのような場合に、どの程度の予告期間をおけば良いか、予め定めておくことは契約当事者双方にとって有益です。
3 問題がない時こそ契約書の整備を
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注文書の法的効力や注文請書との違いとは?契約を成立させるために重要なこと
企業がフリーランスと取引をする場合、フリーランスに「注文書」や「発注書」を発行するケースは多くあります。また、フリーランスから「注文請書」を発行してもらっている企業も多いでしょう。このように、ビジネスの現場では頻繁にやり取りされる注文書・注文請書ですが、それぞれの法的効力を正しく理解している担当者様は少ないかもしれません。今回は、注文書・発注書・注文請書の役割や法的効力、契約書との違いなどについて解説していきます。
CONTENTS
■注文書とは?注文請書とは?
なお、下請法が適用になる取引においては、親事業者から下請事業者へ発注内容を明確に記載した注文書などの書面(いわゆる「3条書面」)を発行することが義務付けられています。下請法に則った注文書の書き方は、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 下請法に沿った発注書(注文書)の書き方を解説! – pasture
■注文書・注文請書の法的効力
注文書や 発注書、 注文請書の法的効力を理解する前提として、「契約の成立に必要なこと」についてご説明します。
民法上、契約が成立するには、一方当事者による「申込み」と他方当事者による「承諾」が必要だとされています。申込みと承諾があることで、当事者双方の意思が合致したものとして契約が成立します。
なお、契約成立のためには、契約内容について当事者間の意思の合致さえあればよく、意思表示の形式は問われません。申込み・承諾の意思表示は必ずしも書面でおこなわれる必要はなく、口頭でおこなわれた申込み・承諾であっても有効な契約として成立します。
●契約書と注文書や発注書・注文請書の違い
上述のとおり、注文書・ 発注書 は、相手方に対して発注を申込むために書面です。あくまでも一方的な意思表示に過ぎないため、原則として注文書単体では法的効力を持たず、契約が成立することもありません。注文請書も、相手方に対して一方的に承諾の意思表示をする書面です。注文書と同様に、注文請書単体では法的効力を持たず、契約が成立することもありません。
■注文書のみで契約が成立するケースも 取引基本契約書とは
上述のとおり、原則として注文書単体では法的効力を持ちませんが、注文書のみで契約が成立する場合があります。それが以下のケースです。
●基本契約で「注文書・発注書のみで契約が成立する」ことを合意している場合
当事者間で、「発注者が受注者に注文書を交付することにより個別契約が成立するものとする」といった規定のある基本契約書(取引基本契約書)を交わしている場合があります。この場合は、基本契約書の規定どおり、注文書のみで契約が成立します。基本契約書の詳細は後述します。
▼商法509条(契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)
1. 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
2. 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。
■継続取引の際は「基本契約書」を交わしておこう
●基本契約書とは?
企業が外部の事業者と継続的な取引をおこなう場合、たとえば、「成果物が納期までに納品されなかった場合はどうするのか?」「成果物に瑕疵があった場合はどのように対処するのか?」「対価の支払いはいつまでにおこなうのか?」など、基本的なルールを事前に明確にしておく必要があります。このような基本ルールを決めるために用いられるのが、「基本契約(取引基本契約)」です。
基本契約書(取引基本契約書)は、事業者間で反復継続される個々の取引(個別契約)に共通して適用される条項について、あらかじめ合意しておくための契約書です。
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